古畑任三郎で堺正章が演じた狐忠信とお茶漬け食べる歌舞伎演目とは?

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古畑任三郎シーズン1の第2話『動く死体』で、犯人役を演じたのは「女将さーん!時間ですよー!!」でおなじみの堺正章さん。

 

堺正章さんが演じたのは歌舞伎役者・六代目中村右近で、こんな感じのプロローグでしたね。

 

これから開演する舞台『義経千本桜』の主役・狐忠信に扮するべく、たんたんと準備をする楽屋で事件が起こります。

 

もみ合いとなった警備員を突き飛ばした拍子に、頭を強打させて死亡させてしまったのです。

 

しかし中村右近は、殺害したあとも何食わぬ顔で舞台へと上がり、拍手と歓声に包まれるのでした。

 

公演を終えた中村右近は、歌舞伎役者としては神聖な場所であろう舞台上へ、警備員の遺体を引きずってきます。

 

そして、あたかも転落死したかのように偽装しました。

 

偽装工作を終えると今度は近くのコンビニまで車を走らせ、お茶漬けセットを購入。

 

こっそり楽屋に戻ったかと思うと、明かりもつけず、静かにお茶漬けの味を噛みしめるのでした。

 

・・・こんな感じのストーリーでした。

 

ここで気になるのが、中村右近が演じている狐忠信・・・。

 

のぼりには『義経千本桜』とありましたが、これって本当に存在する演目なの?・・・です。

 

また楽屋に訪れた古畑との会話でも、来月は『盟三五大切』という演目の主役を演じると中村右近はいっていました。

 

芸者を殺害したあとにお茶漬けを食べる物語って、どんなん?って思いませんか?

 

そこで今回は、堺正章さんが演じた犯人・中村右近の舞台『義経千本桜』と『盟三五大切』という演目についてまとめました。

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古畑任三郎で堺正章が演じた狐忠信『義経千本桜』とは?

義経千本桜は実在する演目で、歌舞伎作品でも非常に人気が高い演目です。

 

演目名にもなっている源義経は、主役というより3つの話のつなぎ役として登場するという不思議な立ち位置の人物なんですよね。

 

逆に、『3つの話』とはどんな話なのかというと・・・。

 

・平家の生き残りとして登場する知盛

・札付きの悪であり親思いの寿司屋の権太

・佐藤忠信に扮した狐忠信

 

それぞれ違った人物が主となってストーリーが展開されるのです。

 

堺正章さんが古畑任三郎で演じていた『狐忠信』は狐の化身で、河連法眼館の段のワンシーンだったのです。

 

狐忠信って何者?

主な登場人物

・源義経

・静御前

・佐藤忠信

・狐忠信

 

狐忠信は、狐です。

人間ではありません。

狐忠信の目的は、源義経が最愛の妾・静御前にたくした『初音の鼓』でした。

 

決して悪さをするために、人間の姿で静御前の前に現れているのではありませんでした。

 

初音の鼓は、長く続く間伐時に行われる雨乞いの儀式で使うための鼓なのですが、その鼓は生きた狐の皮をはいで作られたものでした。

 

そして、その『生きた狐』というのが、狐忠信こと源九郎狐の両親だったのです。

 

姿が鼓に変わっても、源九郎狐にしてみれば親であることには代わりはありませんよね。

 

両親を思い慕う、小狐の愛を描いた物語だったのです。

 

義経千本桜とはどんなストーリー?

源義経は実兄からあらぬ疑いをかけられ、その身を山奥の寺に隠すことにしました。

 

そのとき、義経が大切にしている妾・静御前に、自分の形見として『初音の鼓』をたくします。

 

そして義経は、自分がいない間の護衛として静御前のそばに置いたのが佐藤忠信だったのですが・・・、この佐藤忠信こそ、源九郎狐が人間に化けた狐忠信だったのです。

 

このとき本物の佐藤忠信がなにをしていたかというと・・・、実母の看病のために実家に戻っていました。

 

狐忠信は、静御前が持っている初音の鼓(両親)のそばにいられるということで、義経の言いつけをしっかりとまっとうします。

 

が、静御前は義経への思いが溢れついに我慢ができなくなって、義経が身を潜めている吉野へと旅に出ることにしました。

 

静御前のお供をする狐忠信は道々、姿をくらませることがあるのですが、初音の鼓をポンと打つことその音色に姿を現します。

 

そんな不思議な行動も、狐忠信が人間であると信じているからこそ静御前は不審を思うことはありませんでした。

 

一方、義経の前には本物の佐藤忠信がやってきます。

 

義経と忠信は久しぶりの再会に喜び合うのですが、静御前の姿がないことを不審に思い訊ねると、「護衛などそんなことは頼まれた覚えはない」と言われます。

 

義経にしてみれば、大切な静御前の護衛をほっぽりだして、しかもその約束さえ覚えておらず自分の前にのうのうと現れた忠信に激怒します。

 

しかし、静御前の護衛を頼まれたのは狐の忠信であり、人間の忠信には身に覚えがあるわけがありません。

 

何が何やらさっぱりわからないといったリアクションの忠信に、怒りがおさまらない義経は家臣の駿河と亀井に、忠信へ強く尋問するように命じるのですが・・・、ちょうどこの場面に出くわすのが狐忠信を引き連れて到着した静御前です。

 

あっちにも忠信、こっちにも忠信・・・。

 

その場にいるすべての人が、仰天したのは言うまでもありませんね。

 

気づけば狐忠信はまたしても姿を消してしまうのですが、初音の鼓の音色に呼び戻され、静御前に問い詰められることで自分の正体を白状するのです。

 

経緯を知った静御前と、それを陰で聞いていた義経は、源九郎狐のひたむきな両親への愛に涙し、初音の鼓を源九郎狐に渡したのでした。

 

思わぬ形で自分の手元に戻ってきた両親に、小狐はたいそう喜び、以来その姿を再び現すことはありませんでした。


 

 

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古畑任三郎で堺正章が演じる予定だった『盟三五大切』とは?

『義経千本桜』の公演中に警備員を殺害したことで、逮捕されることになった中村右近。

 

もし事件など起こさなければ身柄を拘束されることなく、次の『盟三五大切』でも舞台に立っていたはずでした。

 

この『盟三五大切』ももちろん、実在する歌舞伎演目の一つです。

 

盟三五大切で気になることといえば、堺正章さんが言ったこのセリフです。

 

「来月やる、盟三五大切って芝居ね。

あたしがやる『薩摩源五兵衛』、芸者殺したあとに茶漬け食うんですよ

どんな気持ちが味わってみたくなってね・・・」

 

そうなんです。

次の主人公は、芸者を殺してお茶漬けを食べるという、猟奇的な行動に出るというのです。

 

この役を演じる上でどんな気持ちだったのかを知るために、現場にとどまってお茶漬けを食べたと主張したのですが・・・。

 

歌舞伎の演目とはいえ一体どんな経緯で芸者を殺し、のんきにお茶漬けを食べることになったのか、シリアスなのかシュールなのか・・・全くストーリーが見えてきませんよね。

 

しかし調べてみると、まるで『世にも奇妙な物語』で描かれるようなストーリーだったのです。

 

盟三五大切とはどんなストーリー?

主な登場人物

・三五郎

・小万

・源五兵衛

・(三五郎の父)

 

この4人の間で、100両という大金が巡ってストーリーが展開されていました。

 

中村右近が演じる予定だった源五兵衛は結果的に、芸者・小万を殺害し首をはねて持ち帰り、その首を目の前にしながら食事をします。

 

しかし、そもそも源五兵衛が、こんなにも冷徹な殺人者になってしまうのは、自分自身に落ち度があったからなのです・・・。

 

というのも源五兵衛とは仮の姿で、その実は赤穂浪士47人のひとりである不破数右衛門正種なのですが。

 

不破数右衛門といえば浪人から加わったという珍しい逸材で、討ち入りの際は大活躍の働きを見せた人物です。

 

その数右衛門は、警護をまかされていた御用金を、盗賊にごっそり盗まれてしまっていたのです。

 

このお金をなんとか、なんとか弁償しないことには、討ち入りには参加できなくなってしまいました。

 

100両という途方もない金額はおろか、その日を過ごすためのお金すら持ち合わせていなかった超貧乏な数右衛門こと、浪人の源五兵衛です。

 

に・も・か・か・わ・ら・ず!

源五兵衛は芸者・小万にゾッコンで、彼女に貢ぐためならなけなしの家財道具だって、惜しむことなく売り払ってしまうほどの熱の入れようでした。

 

目線を小万に変えると、芸者・小万は源五兵衛一筋とばかりに色目を使って、いいように貢がせていました。

 

小万には愛する夫・三五郎がいます。

 

三五郎が「どうしても100両が必要なんだ」というもんから、小万は夫の言いなりとなって、芸者として働いているという経緯があります。

 

更に目線を変えると、小万の夫・三五郎も三五郎で大きな悩みを抱えていました。

 

実は、実の父親から勘当されていたのですが、その父親が「100両必要だ」と自分を頼ってきてくれたのです。

 

ここは一つ、父親の必要とするお金をつくって渡せば、勘当を解いてもらえるのではないかと目論んだのです。

 

・源五兵衛は、盗難にあった御用金の弁償として100両が

・小万は、夫が必要といっている100両が

・三五郎は、父親が必要といっている100両が

それぞれ欲しいわけです。

 

ここで源五兵衛の叔父さんが、源五兵衛の浪費を見るに見かねてなんと!100両を用立ててくれることになりました。

 

さっきから100両、100両と簡単にいっていますが、100両って、そう簡単に手にすることができるような金額ではありません。

 

現代でいうところの800万円~2,000万円ではないかという、大金です!

 

普通に働いていたって作れるお金じゃないわけですから、そりゃあ、目の色が変わりますよね。

 

源五兵衛の懐に100両が転がり込んだことを知った三五郎は、妻・小万と一芝居うって、まんまと源五兵衛から騙し取ることに成功します。

 

どんな方法かというと、小万の身請けをチラつかせて100両を奪うというもの。

 

ようするに、結婚詐欺ですよね。

 

その事実を知った源五兵衛にしてみれば、たまったもんじゃありません!

 

だって、その100両で仇討ちに参加する予定だったわけですよ。

 

参加したかった仇討ちを棒に振ってでも芸者・小万との愛を実らせたかったのに、ふたを開けてみれば全てが嘘だったのです。

 

小万には夫がいて、これまでの自分に向けられていた愛はすべて偽りだったという現実を突きつけられたら、誰だって逆上するに違いありません。

 

復讐鬼となってしまった源五兵衛は次々と人を斬り、大量殺人を繰り返します。

 

そしてまんまと小万を獲られ、黒幕となる三五郎の居場所を白状させようとするのですが、小万は最後まで口を割ることはせず、源五兵衛に首をはねられてしまいました。

 

そののち源五兵衛は、小万がなぜ夫のために100両をだまし取ったのか、本当の理由を知るのです。

 

もちろん夫がほしいと言ったためなのですが、その夫・三五郎が父親のために作りたかった100両というお金は、三五郎の父親が使えていた主人を助けるためのお金だったのです。

 

仕えていた主人こそが浪人となった源五兵衛であり、赤穂浪士47人の1人として活躍する不破数右衛門正種、その人だったのです。

 

まとめると・・・

・小万が100両を奪ったのは、夫・三五郎のため

・三五郎が金策に励んだのは、父親のため

・三五郎の父親が必要としていた大金は、主人・数右衛門を助けるため

・その数右衛門は、浪人・源五兵衛だった

 

自分が盗賊に御用金を奪われたばっかりに起きた悲劇で、100両という大金は巡り巡って、自分のために奪われることになったという話でした。

 

古畑任三郎の堺正章の回で使われた『スッポン』とは?

最後に、スッポンについてふれたいと思います。

 

この『動く死体』で使われた舞台装置が、スッポンというものでした。

 

スッポンは、歌舞伎ならではの花道に仕掛けられている舞台装置で、奈落でスタバっている役者を舞台にスーッとせり上げる装置のことをいいます。

 

実は、花道に仕掛けられたスッポンからは、人間役が登場するということはほとんどありません。

 

堺正章さんも劇中で説明していましたよね。

 

「狐忠信を音もなく、スーッとせり上げたくて発注した」って。

 

狐忠信は、人間の姿をした狐でしたね。

 

怪しくも、音をたてずにせり出てくるさまは、まさしく妖怪そのものといえそうです。

 

役者をせり上げる装置といえば舞台上にもありますが、あちらは『セリ』と呼ばれています。

 

呼び方が違うだけで、装置的には同じものです。

 

スッポンという名前の由来ですが、コラーゲンで有名なすっぽんの、首をスウーっと出すさまに似ていることから来ているとのことです。

 

歌舞伎観劇する際は、スッポンにも注目することをおすすめします!

 

古畑任三郎で堺正章が演じた狐忠信とお茶漬け食べる歌舞伎演目とは?のまとめ

今回は、ドラマ・古畑任三郎で取り上げられた歌舞伎の演目『義経千本桜』と『盟三五大切』についてまとめました。

 

歌舞伎は独特な言い回しがあったり、独特な化粧だったりと、歌舞伎ファン以外の一般人にはとっつきにくい部分があります。

 

しかしこうして、あらかじめストーリーを知っていたり、装置の秘密なんかを調べてみたりすると、初めての観劇でも楽しめそうですね。

 

 

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