歩きスマホの危険性
今回の事件、事故に巻き込まれた女性の立場にたってみると、女性はこんなふうに思っていたのではないかと想像できます。
「いつもの道だから大丈夫」
「いつもの感覚で歩けば問題ない」
「いつもスマホ見て歩いているけど他人と衝突することはなかった」
「歩いている時間を有効に使っているだけ」
「自分の時間はどのように使っても問題ない」
「歩きスマホをしても誰にも迷惑をかけていない」
でも「安全だ」とか「迷惑になっていない」とか思っているのは本人だけで、実は、周囲の方が事故に巻き込まれないように歩きスマホ者を回避しているのです。
歩くという行為は自動車や自転車など比べると、スピードが非常に遅いですよね。
ゆっくりとした速度での移動だからこそ誰にも迷惑をかけないと思い込みが、結果、思いもよらない事故を招いてしまうものなのです。
電車事故の女性も、「自分は遮断機の外側で電車が通過しているのを待っている」と思い込んでいたため、東武東上線の職員さんや乗客の皆さんに多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
歩きスマホが危険な理由
歩きスマホをしている人って、以下のようなことが状態で歩いています。
視野が狭くなっている
周囲への注意力が低下している
前を見ているようで全然見ていない状態で、ゾンビのように歩き回っているのです。
「そんなことない!ちゃんと周囲を見て歩いているし注意している」という声が聞こえてきそうですが、果たして本当にそうでしょうか。
ちゃんと注意しているのなら、他人にぶつかるでしょうか?
ちゃんと注意しているのなら、電柱や壁に激突するでしょうか?
ちゃんと注意しているのなら、駅のホームから落下するでしょうか?
わたしは、歩きスマホを行っている人を、こんなふうに見ています。
道幅が30cmしかない細い道を
暗いトンネルが覆い
見える明かりは何百メートルも先の出口のみ
しかも30cmしかない道の両脇は、断崖絶壁
でも真っ暗闇だからこそ、自分が危険なところを歩いていることに気づいていない・・・
道を一歩踏み外すことで真っ逆さまに落ちていく状況を、想像しただけで足がすくみませんか。
画面を見ることに集中している
歩きスマホをする人の7割近くの人がやっていることは、SNSやインターネットの閲覧です。
ガラケーよりも大きくなったと言っても、手のひらサイズくらいしかない小さな画面のスマートフォン。
その小さな画面に表示されている文字を読むのに、どれだけ集中しないといけなでしょうか。
小さな画面の中の小さな文字を歩きながら読むということは、歩く振動で文字は揺れるため、さらに集中しなければならないということになります。
歩く振動による文字の揺れをおさえるための対策として、スマホを持つ腕を胴体に固定するという方法をとっています。
そのため、歩きスマホをする人のほとんどは、うつむいた状態になっていることが多いのです。
うつむくことで見えている世界は、地面や足元ばかりで、とても小さな範囲に限られます。
今のあなたも、そんな大勢になっていませんか?
視野が狭くなっている
歩きスマホをしている人の視野は、通常の20分の1になっていると言われています。
真正面をみて、見えている視野を縦に5分割・横に4分割した一つ分しかみえていないということになります。
冗談のように思えますが、実際にスマホの文字を読みながら見る周りの風景に意識してみると・・・まんざら嘘ではないということがわかります。
下を向いている状態での歩きスマホ者の安全確認は、目の可動域だけで周囲の確認をとっています。
確認というよりも、チラ見といったほうが正しい表現かもしれません。
よほどのことがない限り頭を持ち上げ、首を左右に振って周囲を見渡すことはありません。
しかもスマホ画面から目を外すのは一瞬です。
それも前方のみで、左右はほとんど見ていません。
大抵の人は前に向かって歩きますよね。
欽ちゃん走りのように横に歩くことも、マイケル・ジャクソンのムーンウォークのように後退することもありません。
人間は前に向かって歩きます。
だから歩きスマホの人は、前方2~3m先のみをチラッとチラ見する程度にしか確認をしていないのです。
周囲への注意力が低下している
その証拠に、歩きスマホをする人は色々なものにぶつかったり、つまずいたりしています。
ガードレールに衝突
歩く人と衝突
電車の駅のホームから落下
階段から落下
すべて前を見ていれば回避できるようなことなのですが、歩きスマホによってこんなにも簡単なことができなくなってしまいます。
これこそ、周囲への注意力が低下しているとしか言いようがありません。
自分だけが怪我をして痛み目に遭うのなら自業自得で済まされますが、他人を巻き込んで大きな事故に発展させてしまうのが歩きスマホの怖いところです。
ぶつかった壁が、実は世界遺産の建造物だったら?
高齢者と衝突して、死亡させてしまったら?
階段から滑り落ちて、多くの人をなぎ倒してしまったら?
「そんなこと起きない」なんて言いきれますか?
今回の電車にはねられた事故が、いい例ではないでしょうか。
歩きスマホが減らない理由
歩きスマホの危険性があちこちで叫ばれているにもかかわらず、一向に減少する気配がありません。
むしろ、どんどん増えていっています。
なぜ歩きスマホは減らないのでしょうか。
それは「自分だけは大丈夫」という、根拠なき身勝手な感情にほかなりません。
「みんなやっていることだし」
「移動中が暇だから」
「特にきれいな風景があるわけでもないから」
情報で溢れている現代において、スマートフォンはもはや宝箱のような存在です。
ポチポチっとするだけで、世界中で起きている出来事が知れるし、興味のあることも出くわす事ができます。
手放せない気持ち、よくわかります。
わかるのですが『命』と『暇つぶし』を両天秤にかけたらどちらが重たいか・・・、考えるまでもなく答えは『命』ということに早く気づいて欲しいものです。
人によっては、本当に急ぎの用事で返信をしなくてはならないのかもしれません。
道に迷って、現在地を確認する必要もあるでしょう。
そんなときは、道の端によけて立ち止まってからスマホを操作したらいいのです。
移動中の暇つぶしも、せめて電車・バス・タクシーなどの乗り物での移動中に留めるようにして、自分自身が主体となって移動する歩行・自転車・自動車などの場合は、安全を優先すべきなのです。
「自分だけは大丈夫」
「なにがあっても自己責任」
こんな無責任な考えは、今すぐ捨てましょう。
そして、歩きスマホで迷惑を被る他人がいることに、そろそろ気づきましょう。
歩きスマホをやめさせる方法
今や社会問題となっている歩きスマホですが、現在の対策としては『注意喚起』がせいぜいのようです。
歩きスマホ注意喚起のポスター
注意喚起のアプリとは、スマートフォンが歩いていると認識したときに、画面操作がしにくくなるというものです。
しかし歩きながらスマホ操作を楽しんでいる人にとって、これほどまでに不便なアプリをわざわざインストールする理由はどこにもありません。
注意喚起のポスターにおいては、そもそもスマートフォンの画面にしか見ていない人にとっては無意味に等しい存在です。
「一度、危険な目に遭わないとわからない」
確かに自分の身に危険を感じたとき、これまでの行為を反省し、今後の行動が改善されるパターンはあるでしょう。
しかし「今回はたまたま運が悪かった」と、反省することをしなければ効果はありませんよね。
要するに、
危なからやめてと懇願しても
歩きスマホの危険な映像を見せても
歩きスマホ特集の番組を放送しても
歩きスマホをしている本人が強く意識を変えない限り、どんな策を講じても『のれんに腕押し』というわけです。
世界を見渡せば、歩きスマホ者専用レーンが設けられたり、信号機を地面に埋め込んでみたりといった対策がとられています。
これによって歩きスマホ者の命は守られるかもしれませんが、歩きスマホ者のためにはならない、堕落させるだけのその場しのぎと感じるのは私だけではないはずです。
歩きスマホは、たとえ罰則を設けたとしてもなくならないのが現状です。
それを裏付けるのが、飲酒運転やあおり運転ではないでしょうか。
歩きスマホで事故増加中!危険なのに減らない理由とやめさせる方法!のまとめ
わたしは以前、山手線の新大久保駅のホームで、命を助けられました。
二時間前、ホームで落とした小銭入れを探すために、電車が到着するアナウンスが流れる中、ホームの下を覗き込んでいたのです。
もしあのとき、あの男性が「あの、危ないですよ」と、声をかけてくれていなければ、首が吹っ飛んでいたかもしれません。
あのとき、あの男性がスマホに気を取られていなかったから、危ない行為をしている私に気づいて声をかけてくれたのです。
今回の事故にあった女性は周りに人がいたにもかかわらず、危ない状況にあることを教えてくれる人がいませんでした。
不運・・・といえばそれまでですが、もしスマホさえ持っていなければ確実に助かっていた命です。
決して他人事と思わず、自分のこととして、歩きスマホの危険性を今一度考えてみてはいかがでしょうか。