まな板の上にのった新鮮な魚。
悠真は隣でじっと見つめながら、今さらながら気づく——和臣は、魚を捌くのがやたらと手慣れている。
包丁を握る指先は迷いなく、スッと刃を滑らせていく。
内臓を取り除き綺麗に三枚におろす手際の良さは、まるでプロの料理人みたいだ。

・・・和臣って、魚捌けるんだ。
ぽつりとこぼすと和臣は手を止め、少し意外そうに首を傾げる。

ん?
ああ、昔から普通にやってたけど。
さらりと言う彼に、悠真はますます目を奪われる。
普段の落ち着いた雰囲気も好きだけど、こうして黙々と作業する姿は頼もしくて——またひとつ、新たな一面を知れた気がした。
そんなことを考えているうちに、和臣の手際の良さで魚の下処理はあっという間に終わる。
片付けを済ませ、いざテーブルへ運ぼうとしたその瞬間——ふわりと、鼻をつく生臭さ。

・・・和臣、手、魚臭い。
魚を捌いたあと、手に残る独特の生臭さ。
石鹸で洗ってもなかなか取れず何度も手をこすり合わせるものの、ふとした瞬間にまだ匂いが残っていることに気づく……そんな経験はありませんか。
料理の途中や食事の前にスッキリと匂いを落としたいものの、強い洗剤を使うのもためらってしまいます。
ナマモノさわると、臭いは仕方ないのか・・・。
悠真が思わず指摘すると、和臣は自分の手をくんくん嗅ぎ、苦笑いを浮かべる。

まあ、いつものことだしな。

いつものことって・・・。
さっきまであんなに格好よかったのに、これでは台無しだ。
悠真は軽くため息をつくと、あることをふと思い出した。

ねえ、簡単に匂いが取れる裏ワザがあるんだけど、試してみない?
友達に教えてもらったんだけど・・・。
そう言って、悠真は蛇口を指さした。
和臣が「ん?」と目を瞬かせる。
こんな場面で試してほしいのが、「ステンレスを触るだけ」という簡単な裏ワザです。
蛇口やシンクなど、家の中には意外と身近なステンレス製品がたくさんありますよね。
この方法を使えば、わざわざ専用の消臭剤を用意しなくても、魚の臭いをスムーズに取り除くことができるんです。
——さあ、ステンレスの魔法を体感してみましょう。
ステンレスで手についた魚の臭いを取る裏ワザ
魚をさばいた後の手に残る生臭さは、石鹸で洗ってもなかなか落ちないことがありますよね。
そんなときにおすすめなのが、「ステンレスを触りながら手を洗う」 という裏ワザです。
ステンレスには、臭いの元となる物質と反応し、分解する働きがあります。
そのため、蛇口やシンクなどのステンレス部分をこするだけで、驚くほど簡単に臭いが消えるんです!
準備するもの
◆水道水(流水がベスト)
◆ステンレス製のもの(蛇口、シンク、ステンレス製のスプーンやボウルでもOK)
特別な道具は必要なし!家にあるもので、すぐに試せるのがポイントです。
手順
① 手を軽く洗う
まずは水で手をサッとすすぎましょう。汚れや魚のぬめりを落としておくことで、より効果が発揮されます。
② ステンレス部分を触る
水道の蛇口やシンクの内側、またはステンレス製のスプーンやボウルなどを手で包み込むように握ります。指先から手のひらまで、まんべんなく触れるようにしましょう。
③ 流水でこすりながらなでる
そのままの状態で、水を流しながら手をこすります。ポイントは、ゴシゴシ擦らず、なでるように触れること!
※指の間や爪の周りもしっかりと ステンレスに触れるようにすると、より効果的です。
④ 最後にもう一度すすぐ
ステンレスを触り終えたら、普通に石鹸で手を洗いましょう。すると、あの嫌な魚の臭いがスッキリ消えているはず!

今はこんなに便利な商品があります。
和臣が魚を捌いてくれるんなら、一つ購入しとこっかな?
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ステンレスで手についた魚の臭いが消える理由
魚を触った後に手に残る「生臭い臭い」は単なる汚れではなく、魚由来の特定の成分が原因です。
この臭いの元となる物質は、水や石鹸だけではなかなか落ちにくいという特徴があります。
では、なぜステンレスを触るだけで臭いが消えるのでしょうか?そのメカニズムを詳しく解説します。
1. 生臭さの原因は「トリメチルアミン」
魚の臭いの主な原因は、「トリメチルアミン(TMA)」という揮発性の化学物質です。
これは、魚が死んだ後、体内の酵素や微生物の働きによって生成されます。
このトリメチルアミンはアルカリ性の性質を持ち、皮膚に残りやすいため、水や石鹸で洗ってもなかなか完全には取れません。
2. ステンレスが臭いを消す仕組み
ステンレスに触れると、手についたトリメチルアミンがステンレス表面の金属イオンと化学反応を起こすことで分解・吸着され、臭いが消えていきます。
具体的には、以下の2つの作用が働きます。
金属触媒作用(酸化還元反応)
ステンレスは鉄・クロム・ニッケルなどの合金でできており、その表面には酸化被膜(不動態皮膜)という薄い膜があります。
この膜が触媒のように働き、臭い成分を酸化・分解するのです。
吸着作用
ステンレス表面には微細な凹凸があり、臭いの元となる分子がそこに吸着されることで、手から臭いが取り除かれます。
3. 効果を高めるポイント
ステンレスに触れるだけでも効果はありますが、流水と一緒に使うことで、より効率的に臭いを除去できます。
流水を使う理由
ステンレスが分解・吸着した臭いの成分を、そのまま水で洗い流すことで、完全に手から取り除くことができます。
こすらず、なでるように触れる
強くこすりすぎると、手の皮膚に臭い成分がより密着してしまう可能性があります。
やさしく撫でるように触れることで、ステンレスの表面との接触が最適になります。
魚の生臭さの原因はアルカリ性のトリメチルアミンという成分。ステンレス表面の金属イオンが触媒となり、臭い成分を酸化・分解する。
ステンレスの微細な凹凸が臭い分子を吸着する作用もある。
流水を使うことで、分解された臭い成分をしっかり洗い流せる。

このメカニズムのおかげで、特別な洗剤を使わずに、簡単に手についた魚の臭いを消せるというわけです!
ステンレスが臭くならない理由
この裏ワザを連続で使うことで、ステンレス自体が臭くなることはほぼありません。
その理由は以下の通りです。
1. ステンレスの「不動態皮膜」が守っている
ステンレスは、表面に「不動態皮膜」と呼ばれる酸化被膜が形成されているため、汚れや臭いが内部に染み込むことはありません。
この皮膜は非常に薄いですが、水や空気と反応して常に再生されるため、臭い成分が蓄積しにくいのです。
2. 吸着しても流水で流れ落ちる
ステンレスに触れたときに臭い成分が一時的に吸着されることはありますが、それは物理的な吸着に近いものです。
流水と一緒に使うことで、ステンレス表面にとどまることなく、すぐに洗い流されるため、臭いが蓄積することはありません。
3. ステンレスが臭くなる場合とは?
普通に使っている限り、ステンレスに臭いが染みつくことはほぼありませんが、例外的に汚れが付着していると臭うことがあります。
皮脂や油汚れがついたままだと臭いが残る
→ 手の脂や魚の油がステンレスに付着したまま放置すると、そこに臭い成分が絡みついて残る可能性があります。
→ しっかり洗えば臭いは取れるので、洗剤を使って定期的に掃除するのがベスト。
細かい傷が多いと、汚れが入り込んで臭いの原因になる
→ 魚を捌く作業台や流し台のステンレスに細かい傷が多いと、その隙間に臭いの元となる成分が入り込むことがあります。
→ ただし、洗剤とスポンジでこすれば取れるので、臭いが気になったら掃除すればOK。
◆不動態皮膜が守っているので、臭い成分が染み込むことはない
◆吸着しても、流水と一緒に洗い流される
◆汚れや傷があると臭う可能性はあるが、洗えば落ちる
毎日魚を捌いて毎日この裏ワザを実践しても、ステンレス自体が臭くなることはほぼありません。

ただし、汚れが残ったままだと臭うこともあるので、定期的に洗剤で掃除するのがおすすめです!
魚以外の臭いにも効果的?
このステンレスを触る裏ワザは、魚の臭いだけでなく、さまざまな強い臭いに効果があります!
ステンレスは、臭いの原因となる成分(主に硫黄化合物)と化学反応を起こし、臭いを中和・分解する性質があります。
そのため、以下のような臭いにも効果を発揮します。
効果が期待できる臭い
食材 | ニオイの原因成分 | 効果の有無 |
魚 | トリメチルアミン | ◎ 効果あり |
にんにく | アリシン(硫黄化合物) | ◎ 効果あり |
玉ねぎ | 硫化アリル | ◎ 効果あり |
肉(とくにラム・ホルモン) | 硫黄化合物 | ◎ 効果あり |
ネギ類(長ネギ・ニラなど) | 硫化アリル | ◎ 効果あり |
魚の臭いと同じように、硫黄化合物を含む食材(ニンニク、玉ねぎ、ネギ類、ラム肉など)にも有効です!
効果が薄い or ない臭い
ニオイの原因 | 具体例 | 効果の有無 |
脂肪由来の臭い | バター、ラード、揚げ物 | △ 効果が薄い |
発酵食品 | 納豆、チーズ | △ 効果が薄い |
スパイス系の臭い | カレー、シナモン | ✕ 効果なし |
化学的な臭い | 洗剤、ガソリン | ✕ 効果なし |
脂肪や油分が原因の臭いにはあまり効果がなく、スパイスや化学的な臭いは落とせません。
この場合は、石けんやレモン汁などの別の方法を併用するのがおすすめです!
ステンレスの裏ワザは、魚・ニンニク・玉ねぎ・肉などの「硫黄化合物による臭い」に効果あり!
脂肪や発酵食品の臭いには効果が薄い。
スパイスや化学的な臭いにはほぼ無効。効果が薄い場合は、石けんやレモン汁などと組み合わせると◎。

料理中の手の臭いが気になるときは、まずステンレスで試してみて、それでも残るようなら別の方法を試すのがベストですね!
ステンレス裏ワザの注意点
① 手が濡れた状態でおこなう
ステンレスの表面で臭いの成分を分解するには、水が媒介となって化学反応を助ける必要があります。
手が乾いた状態では効果が発揮されにくいので、手を軽く濡らしてからおこなうのがポイントです。
② ステンレスの材質を選ぶ
触るステンレスは、蛇口・シンク・ボウルなど、日常的に水回りで使われているものが最適です。
ただし、以下のようなものは避けたほうが無難です。
◆避けるべきものコーティング加工されたステンレス(表面がツルツルしすぎていると効果が落ちる)
◆汚れや油がついたステンレス(効果が半減するため、事前に軽く洗いましょう)
◆サビやキズがあるステンレス(触ってケガをする可能性があるため注意)
③ ステンレス製品を強くこすらない
「早く臭いを落としたい!」と強くこすりすぎると、手の皮膚を傷つける恐れがあります。
とくに、乾燥肌や敏感肌の方はやさしく触れるようにしましょう。
④ アレルギーや金属アレルギーのある方は注意
ステンレスは比較的アレルギーを起こしにくい金属ですが、金属アレルギーの方はかぶれやかゆみを引き起こす可能性があります。
違和感を感じた場合はすぐに中止し、石けんで手を洗い流してください。
⑤ 効果がない場合は他の方法と併用
ステンレスを触っても臭いが完全に消えない場合は、臭いの原因が脂肪や発酵食品など、ステンレスで分解しにくいものの可能性があります。
その場合は、レモン汁・お酢・重曹・塩などの方法と併用するとより効果的です!
手は濡らした状態で行うと効果アップ!
コーティング加工や汚れたステンレスは避ける強くこすらず、やさしく触れる
金属アレルギーの方は注意効果が薄い場合は、レモン汁やお酢と併用するのがおすすめ!

ちょっとしたコツを押さえれば、この裏ワザをもっと効果的に活用できますよ!
ステンレスを触るだけで手の臭いが消える!の、まとめ
魚を捌いたあとや、料理中の手の臭いに悩んだことはありませんか?
今回紹介した裏ワザを使えば、水で手を濡らしながらステンレスに触れるだけで、不快な臭いをスッキリ落とせます!
臭いの原因は「硫黄化合物」 → ステンレスに触れることで化学反応が起こり、臭いが分解される!
魚の臭いだけでなく、ニンニク・玉ねぎ・肉の臭いにも効果的!
手が濡れた状態でステンレスに触るのがポイント!
蛇口・シンク・ボウルなど、水回りのステンレスを活用しよう!
金属アレルギーの方は注意!効果が薄い場合はレモン汁やお酢と併用すると◎
ちょっとした工夫で、料理後の手も快適に!
ステンレスに触れるだけで、簡単&手軽に手の臭いをオフ!
これからは、料理のあともスッキリ快適に過ごせますね♪
ぜひ試してみてください!
★おまけ★

ほんとに無臭だ・・・。
魚の生臭さがすっかり消えた和臣は、指先を嗅いで感心しながら悠真の方へ顔を上げる。

すごいだろ?
得意げな表情の悠真。

いや、すごいのはお前じゃなくて、その友達な?
和臣の声のトーンが少し低くなり、悠真は「え?」と瞬きをする。

悠真がたまに話してる『友達』って、あの男だろ?
不機嫌そうに呟くと、スッと悠真の手を取り、指を絡めるようにぎゅっと握る。
そのまま手の甲に唇を落とした。

和臣?

わかってるよ、こんなの馬鹿げてるって。
でも、感情のほうがどうしても先に動くんだよ。
和臣の声は呆れたようで、でもそれ以上に熱を帯びていて、悠真の胸の奥を揺さぶる。

・・・バカ。
呟いた瞬間、和臣が後ろに回り込み、腰に腕を絡める。
ピタリと密着した体温に、悠真の背筋がゾクリと震えた。

お前が誰に何を教わるかなんて、ほんとはどうでもいいはずなのに・・・。
そう言いながら、和臣の唇が悠真の首筋のすぐそばに触れそうなくらいの距離まで寄る。

・・・どうしても、こうして確かめたくなる。
じわりと近づく熱に、悠真は息を詰めた。

・・・そんなに俺、信用ない?
囁くと、和臣が低く笑う。

そんなわけねぇだろ。
愛してる・・・。
さらに強く抱きしめられ、悠真は和臣の全てを受け止めるように、そっと腕を重ねた。