お気に入りのセーターをうっかり洗濯して縮ませてしまった——そんな経験はありませんか?
とくにウール素材のセーターは、水温や洗剤の影響を受けやすく、一度縮んでしまうと元に戻らないと思われがちです。
しかし、じつは簡単な方法で縮んだセーターを復活させることができるのです。

やっちゃった・・・。
悠真は洗濯機の中を覗き込んで青ざめた。
和臣が大切にしていたセーターが、一回りも二回りも小さくなっている。

和臣・・・、あのさ・・・。
恐る恐る声をかけると、和臣の目がセーターに向いた瞬間、その顔が固まった。

・・・悠真、それ。
まさかとは思うけど・・・。

ごめん!間違えて洗濯しちゃって・・・。
でも、俺が着れるサイズになったし・・・。
軽い冗談で空気を和らげようとしたのに、和臣は一切笑わず、無言のまま寝室へと消えてしまった。
扉が閉まる音が、悠真の胸にずしりと響く。
ひとりになった静かなリビングで、縮んでしまったセーターを見つめながら、悠真はひどく落ち込んでいた。
そこへ、スマホの着信音が鳴る。
画面には「和臣の母」の名前が表示されていた。

もしもし、お母さん。
俺・・・どうしたらいいか・・・。

あら、悠真くん?
もしかして、和臣のセーター縮ませちゃった?

えっ!? なんで分かるんですか!?

だってあの子、小さい頃から洗濯で失敗するとすぐに部屋にこもるのよ。
大丈夫、元に戻す方法があるから試してみて?
悠真は半信半疑ながらも、教えてもらった裏ワザをさっそく試すことにした。
必要なのは、洗面器とヘアトリートメントだけ!
この裏ワザを使えば、お気に入りのセーターをもう一度快適に着ることができます。
今回は、縮んだセーターを元に戻す方法をわかりやすく解説します。
縮んだセーターを元に戻す裏ワザ
お気に入りのセーターが洗濯で縮んでしまったとき、諦めるのはまだ早い!
ヘアトリートメントを使えば、繊維を柔らかくして元のサイズに近づけることができます。
ウールやカシミヤのセーターにはとくに効果的な方法です。
◆ 準備するもの
- 洗面器(または大きめのボウル)
- 水(ぬるま湯 約3〜4リットル)
- ヘアトリートメント(約15g)
- バスタオル
- 洗濯機(脱水機能を使用)
◆ 手順
① 洗面器にぬるま湯を入れ、ヘアトリートメントを溶かす
洗面器に3〜4リットルのぬるま湯(30〜35℃程度)を入れ、ヘアトリートメントを加えます。トリートメントが均一に溶けるように手でしっかり混ぜましょう。
② 縮んだセーターを浸し、30分ほどつけ置きする
セーターを優しく水に沈め、繊維にトリートメント液が染み込むようにします。縮んで固くなった繊維がほぐれるよう、30分ほどそのまま放置します。
③ 軽く絞り、形を整えながら1分間脱水する
セーターを取り出し、軽く水を切ります。次にバスタオルで包み、軽く押さえて余分な水分を吸収させます。その後、洗濯機で1分だけ脱水しましょう。脱水しすぎるとシワや型崩れの原因になるので注意!
④ 平干しで自然乾燥させる
形を整えながら、平らな場所(洗濯ネットの上など)に広げて干します。ハンガーにかけると重みで伸びすぎることがあるため、必ず平干ししましょう。乾燥中に何度か軽く引っ張ると、より元のサイズに戻りやすくなります。

この方法を使えば、縮んでしまったセーターもふんわりと元のサイズに近づきます。
大切な衣類を長く愛用するために、ぜひ試してみてください!
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なぜセーターが元のサイズに戻るのか?
セーターが縮むのは、繊維が「絡み合って硬くなる」からです。
この仕組みを理解すると、ヘアトリートメントを使って元のサイズに戻せる理由が納得できるはずです。
① セーターが縮む原因とは?
ウールやカシミヤのセーターは、動物の毛(タンパク質繊維)でできています。
この繊維には、スケール(うろこ状の構造)があり、洗濯中の「摩擦」と「水温の変化」によってスケールが絡み合い、ぎゅっと縮んでしまいます。
これをフェルト化といいます。
とくに、お湯で洗ったり強くこすったりすると、スケールが引っかかってしまい、繊維が元の状態に戻りにくくなります。
② ヘアトリートメントの役割とは?
ヘアトリートメントには、髪の毛を柔らかくする成分(シリコン・カチオン界面活性剤など)が含まれています。
これをセーターに使うと、繊維の表面がコーティングされ、スケール同士の絡まりをほぐす効果が期待できます。
また、トリートメントの保湿成分が繊維に浸透することで、硬くなったウールがしなやかになり、手で優しく伸ばすことで元の形に近づきやすくなります。
③ ぬるま湯でつけ置きする理由
繊維は、乾燥すると固まりやすくなりますが、水分を含むと柔らかくなります。
ぬるま湯(30~35℃)を使うことで、繊維の内部にまで水分が浸透しやすくなり、縮んで硬くなった部分がほぐれます。
さらに、トリートメント成分が繊維全体に行き渡ることで、より効果的に元の状態へ戻すことができます。
④ 干し方が重要!平干しする理由
濡れた状態の繊維はとてもデリケートで、無理に引っ張ると形が崩れてしまいます。
そのため、平らな場所で自然乾燥させることが大切です。
重力で伸びすぎないようにしつつ、乾燥中に何度かやさしく整えてあげると、理想的な仕上がりになります。
縮んだセーターが元のサイズに戻るのは?
✔ トリートメントの成分が繊維を柔らかくする
✔ ぬるま湯でつけ置きすることで、硬くなった繊維をほぐす
✔ 優しく形を整えながら干すことで、元のサイズに近づける

縮んだセーターを復活させるには、「繊維を傷めずにほぐし、無理のない方法で元の形に戻す」ことが重要なのです!
おすすめのトリートメントの条件
基本的にはどんなヘアトリートメントでもOKですが、より効果的にセーターを元に戻すために、以下のポイントを押さえて選ぶとよいです。
✔ しっとり系のトリートメント(保湿・柔軟効果が高い)
✔ シリコン配合(繊維の表面をコーティングし、滑らかにする)
✔ ノンアルコールタイプ(アルコール入りだと繊維が乾燥しやすくなる)
避けたほうがよいトリートメント
✕ ボリュームアップ系(髪のハリ・コシを出す成分が含まれているため、繊維が硬くなる可能性がある)
✕ スカルプケア系(地肌ケア用の成分が不要なため)
ドラッグストアなどで販売されている一般的なしっとりタイプのトリートメントなら問題なく使えます。
もし迷ったら、「しっとり」「保湿」「ダメージ補修」といったキーワードが入っているものを選ぶとよいでしょう!
洗い流さないトリートメントが向かない理由
洗い流さないタイプのトリートメントはNGです!
理由は以下のとおりです。
✕ 濃度が高く、繊維に残りやすい → ベタついた仕上がりになる可能性がある
✕ 油分が多く、均一に行き渡りにくい → うまくセーターの繊維をほぐせないことがある
✕ 水に溶けにくい → 裏ワザの効果が発揮されにくく、ムラができる
この裏ワザでは、髪を柔らかくするための「洗い流すタイプ」のトリートメントが、セーターの繊維をほぐすのに適しています。
洗い流すタイプと洗い流さないタイプの違い
- 洗い流すタイプ → 繊維の内部まで成分が浸透し、ふんわり柔らかく戻しやすい
- 洗い流さないタイプ → コーティングが強く、ベタつきやムラになりやすい
そのため、お風呂で使う「洗い流すタイプ」のトリートメントを選びましょう!
この裏ワザを試す際の注意点
① ウールやカシミヤ以外の素材には向かない
この方法は、ウールやカシミヤなどの天然繊維に適した方法です。
アクリルやポリエステルなどの化学繊維は、縮んだ形が固定されてしまっていて、トリートメントでは元に戻りにくいことがあります。
② 熱を加えないこと!
ドライヤーやアイロンを使って乾かすと、繊維が縮んでしまう可能性があります。
自然乾燥または平干しでじっくり乾かすのがベストです。
③ トリートメントの量に注意
トリートメントを入れすぎるとベタつきの原因になります。
目安は水2Lに対して15g(ティースプーン3杯程度)。多すぎても効果が変わらないので、適量を守りましょう。
④ 伸ばしすぎに注意!
水を含んだセーターは柔らかくなっていますが、無理に引っ張りすぎると形が崩れることも。
伸ばすときは、やさしく少しずつ広げるのがポイントです。
⑤ 仕上げにやさしく整える
乾燥後、もし型崩れが気になる場合は、スチームアイロンを浮かせながら軽くあてると形が整いやすくなります。
ただし、アイロンを直接押し当てると繊維が傷むので、必ずスチームのみで整えましょう。

この注意点を守れば、お気に入りのセーターをキレイに元通りにできますよ!
なぜ化繊には向かないのか?
完全に使えないわけではありませんが、化繊(アクリルやポリエステルなど)には効果が薄いです。
- 化学繊維は熱で形状が固定される
- ウールやカシミヤは、トリートメントの成分で繊維がほぐれ、伸ばしやすくなりますが、化繊は工場で熱を加えて作られるため、一度縮むと元に戻りにくいです。
- とくにポリエステルは「熱可塑性」があるので、洗濯時に高温で縮んでしまった場合は、スチームアイロンで伸ばす方が効果的です。
- トリートメントが繊維に浸透しにくい
- ウールやカシミヤは、髪の毛と同じようにたんぱく質(ケラチン)でできているので、ヘアトリートメントが浸透して柔らかくなります。
- 一方で、化繊はたんぱく質ではなく、トリートメントの成分が浸透しにくいため、あまり効果が期待できません。
化繊でも試してみる価値がある場合
- アクリルの場合は、若干柔らかくなることがあるので、軽く伸ばしながら乾かすことで多少のサイズ調整ができることもあります。
- ブレンド素材(ウール+アクリルなど)なら、ウール部分が柔らかくなることで全体的に伸ばしやすくなる可能性はあります。

ウールやカシミヤなら高確率で効果あり!
化繊はあまり期待できないが、アクリル混なら試す価値あり。
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縮んだセーターが復活!の、まとめ
縮んでしまったセーターを元に戻す裏ワザとして、ヘアトリートメントを使った方法をご紹介しました。
この方法では、トリートメントの成分が繊維を柔らかくし、元のサイズに戻しやすくする効果があります。
とくにウールやカシミヤのセーターに適しており、トリートメントを溶かしたぬるま湯に浸すことで、縮んだ繊維がほぐれ、優しく伸ばせるようになります。
ただし、化学繊維(アクリル・ポリエステルなど)には効果が薄いため、素材を確認してから試すことが大切です。
また、洗い流さないタイプのトリートメントは使用しない、強く引っ張りすぎないといった注意点も押さえておきましょう。
お気に入りのセーターが縮んでしまっても、諦める前にぜひ試してみてください!
★おまけ★
セーターを洗面器の水に浸し、ヘアトリートメントを溶かして30分・・・。
そっと取り出し、優しく脱水をかける。
丁寧に形を整えて干したセーターは、徐々に元のサイズへと戻っていった。
悠真は慎重に畳み、ぎゅっと抱きしめる。
そして、意を決して和臣の部屋の扉をノックした。

和臣・・・。
返事はしてくれないけど、中にいる気配は伝わる。

本当にごめん。
大切にしてた理由も知らないのに、軽く言っちゃった・・・。
扉の向こうから、かすかに和臣の息を呑む音が聞こえた。

セーター、元に戻ったと思う。
でも、ちゃんと戻ってるか・・・着てみてほしいんだ。
静寂の後、ゆっくりと扉が開く。
目の前に現れた和臣は、傷ついた顔をしていた。
でも、悠真の方も泣きそうな目をしている。

ごめん・・・。
セーターも大事だったけど、今、一番大事なのは悠真なんだ。
なのに俺・・・。
謝るのと同時に、和臣は強く悠真を抱きしめた。
低く、震える声に、悠真の胸がぎゅっと締めつけられる。

このセーター、父さんが着てたんだ。
悠真が驚いて顔を上げると、和臣は少し寂しそうに笑った。

俺が高校に入る前に亡くなってさ。
このセーター、父さんが最後にプレゼントしてくれたものだったから、ずっと大事にしてて・・・。

・・・そうだったんだ。
ほんとうにごめん、俺、なにも知らなくて・・・。
悠真はそっと、和臣の背中に腕を回した。

もう、ちゃんと戻ったから。
また着れるよ。

・・・うん。
ありがとな、悠真。
和臣は静かにセーターを受け取り、それを抱きしめるように胸に押し当てた。
そして次の瞬間、ふっと息をついて、悠真の髪に優しく唇を落とした。
和臣の唇から、想いのすべてが伝わってくるかのようで、頬が一気に熱くなる。

・・・俺も、和臣が大事。
その言葉に、和臣が微笑んだ。

・・・じゃあ、もう少しだけ、こうしててもいい?
悠真は黙って、ぎゅっと和臣のシャツを握りしめるのだった。